• 創成教育部門
  • 創成教育部門について
  • 学際実験・実習
  • 創成活動
  • 創生教育部門便り
麻雀、パチンコだって練習が必要。
創造力だって練習が必要だ!

 「創造力は、一部の人たちの特殊な能力ではありません。常識の殻を破るちょっとした勇気さえ持てば、あなたにだってできるはず。殻の中から雛がつつくとき、母鶏が殻をかみ破る。そうしたタイミングの良さを啐啄(そったく)と言います。福井大学工学部はあなたが殻を破るのをタイミング良くサポートします。」
 これは、2006年度版の工学部案内にあるキャッチコピーです。ご存じでしょうか?(工学部案内は、福井大学ホームページの福井大学で学びたい方へ→入試資料の閲覧・請求、からpdfファイルをダウンロードできます。)

誰にだってある創造力

 創造力を「新しいものを造り出す能力」だとすれば、これは、本来誰にでも、いや生き物すべてに備わっている能力です。(フランスの哲学者、ベルグソンによれば、創造的進化こそが生命の本質だそうです。)そもそも日常的に交わす会話。これって、準備もしていないのに文脈に合わせてこれまでに話したことがないようなコトを話しているのですよね。これこそコンピュータにはまねできない創造性の発露です!
 そもそも、日常のビジネスで求められている「創造力」というのは、多くの場合「問題解決能力」です。解くべき課題があったとき、(もちろん、この課題設定自体が健全なモノであり、かつ創造的であるかという問題はありますが、)どのような方法でこれを解決するか。それができる「運動性」が求められているワケです。ですから、創造性といっても技術者にとっては建設的方法の提示こそが求められるワケで、「できない理由をいくら見つけてもゼニにならん」(私の会社時代の上司の言です。ハイ。)のであって、できる方法を見つけてこそ価値が創出されるのです。ですから、大学教員が得意な批判的思考法の市場価値はきわめて低いと言えましょう。とにかく、やってみましょう、というフットワークの良さこそが実社会では売りになります。
 さて、それでは、どのように解決方法を見いだすのでしょうか?えーと、う〜ん。そう、その頭の使い方って、思い出すことに似ていませんか?

創造力と記憶力

 イギリスの理論物理学者、ロジャー・ペンローズは、「創造することと思い出すことは似ている」と主張しています。(CIRCLE News第2号に掲載した「真心創造ラボ」のロゴは不可能立体ペンローズの3角形をアレンジしたモノです。もう一度、ご覧あれ。)確かに、何もないところから生み出すことは、不可能かどうかは分かりませんが極めて困難なことだと言えましょう。映画監督の故黒澤明は、「創造というのは記憶ですね。自分の経験やいろんなものを読んで記憶に残っていたものが足がかりになって、何かを創れるんで、無から創造できるはずがない。」と著書の中で断言しています。
 確かに、ひらめきというのは、それまでに蓄えていた知識・情報を、突然これまでにない形で統合させた時に生まれてくることが多いようです。だとすると、創造力というのも教育できるもの、ということにはならないでしょうか?つまり、創造力の道具箱としての知識や考え方を伝授し、それらをつなぎ合わせる「練習」を体験すること。これが、創成CIRCLEの創造性教育に対する考え方です。
 でも、記憶力が創造力に必須であるとすると、巷でよく聞く「記憶力のいいヤツは、学校の成績は良いが創造性なんてのはね〜」なんていうのは、学校での落ちこぼれの負け惜しみなのでしょうか?
 脳の障害の結果として、恐るべき記憶力を発揮する場合があることが知られています。(映画「レインマン」のダスティン・ホフマンを思い出してください。)電話帳を丸暗記する、はたまた暗記した本を逆に読み上げる…。では、そうした人はすばらしい創造性を発揮できるのでしょうか?どうも、そうでは無いようです。もし、記憶力が生存上の最重要課題であるなら、我々の脳はそれを可能にするように進化したハズです。そもそも、「脳の障害」の結果として、それだけの記憶力があるとするなら、我々の脳にはすでにして、「電話帳一冊丸暗記する」くらいの記憶容量は持っているハズで、我々の脳には、そのような記憶力が働かないようにしているメカニズムがあるということになります。(これは、物忘れのひどい私には精神衛生上、大変な朗報です!)

健全な過ちから生まれる創造力

 同一環境、同一条件下でも同じように行動しない。これが生物のユニークな特徴だと言えるでしょう。そう、生物は「誤り」をおかす存在なのです。そもそも、記憶そのものだって、それほどあてにならないですよね。小学校の同窓会でお互いの記憶が大きく違っていたなんて経験はありませんか?そう、記憶だって編集し、作り変えられるのです。そういったチョットした過ちの中から、これまで誰も考えたことのないアイディアが生まれてくるのではないでしょうか?
 ちょっとぐらいの失敗、へっちゃら、へっちゃら。そういった伸び伸びとした環境下でのさまざまな体験。これが、創成CIRCLEの教育活動方針です。創成CIRCLEは、学生にも教職員にも、子どもにも大人にも、さまざまな体験機会を提供したいと考えています。
 俺はもうトシだから、創造性なんて、と思っているアナタ。最後に、私の大好きなベルグソンの言葉を贈ります。「存在することは、変わること。変わることは成熟すること。成熟するとは自分自身を永遠に創造し続けることである。」(飛田の訳ですので、誤訳があればゴメンナサイ。)みなさん、成熟をめざしましょう!